職域救急研究会の活動とは

設立の目的

職域救急研究会は職域における救急体制や救急措置のあり方を研究し、救急救命措置のスキル向上ならびに救急教育の普及活動に寄与することを目的に設立された研究会です。
現在、国内の事業所の約4割において、何らかの労働災害が発生しています。建設業や製造業においては外傷などの外因性の事例がその大多数を占める一方で、化学物質による急性中毒、酸欠、化学熱傷などの発生も後を絶たちません。デスクワークに従事する労働者においても、内因性疾患(心筋梗塞、不整脈など)による救急事例が頻繁に発生しています。今後65歳まで雇用が延長されることに伴い、心疾患や呼吸器疾患をはじめとした基礎疾病を抱えた従業員が社内で増加することが予想され、虚血性心疾患・脳血管障害等の救急事例が職場で増加するものと考えられます。

  事業所内で発生した救急事例は、外因・内因を問わず働き盛りの就労可能な健常者が多く、初動の救急体制が確実に行われれば社会復帰可能となるケースも多いと思います。すなわち初動の救急対応を確実に実施することで防ぎ得た死を防止することができるわけです。労働安全衛生法において規定される安全管理体制は、健康障害の予防に力点が置かれており、発生後の処置については個々の事業所、産業保健スタッフに任されているのが実情です。事故発生時の救急対応については産業保健スタッフの初動対応が欠かせないが、産業保健スタッフが「何を行うべきか」の明確な指針や科学的根拠は少ないのが実情です。これまで産業医学の中で救急に関する内容が十分検討されたとは言い難いといえます。

  従来より救急医療体制は地域医療が主として担って来ました。しかし、今回の東日本大震災の経験や、事業所における事故や急性中毒の発生状況などを鑑みると、職域においては産業保健スタッフが救急医療のファーストエイドを担うべきである、と考えられます。その為には救急救命措置に関する知識・手技を適切に習得しておかなければならないが、産業保健スタッフを対象とした救急救命教育システムはまだ確立していません。職域における救急対応や体制のあり方を検討すること、ならびに産業保健スタッフの技術向上は避けては通れない緊急課題であり、本研究会の発足の趣旨に至った次第です。

当会における研究内容

 当研究会においては以下の項目を中心に検討します
1)産業医、産業保健師が習得するべき救急技術の検討
2)職域での救急蘇生法の普及のあり方の検討
2)職域に外因による救急傷病者に対する救急医療体制の確立
4)職域における急性中毒傷病者に対する救急医療体制の確立
5)職域に内因による救急傷病者に対する救急医療体制の確立
6)職域における外因、内因の発生に対する疫学的検討

世話人

堀川直人(富士電機 産業医)
内田和彦(オリンパス 産業医)
事務局 南浩一郎(救急振興財団救急救命東京研修所、自治医科大学麻酔科・救急医学、富士古河E&C産業医) 

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